こんにちは。元地方公務員のおさかなまるです。
公務員は安定した給与が魅力ですが、みなさんご存じのとおり副業は禁止されています。
しかし、なぜ公務員は副業をしてはいけないのでしょうか?
実際、副業禁止のルールがおかしいと感じている現役の公務員の方も多いのではないかと思います。
わたしも現役時代は思ってました。
そこでこの記事では、なぜ公務員は副業をしてはいけないのか、副業がバレたらどうなるのか、副業解禁はいつになるのかなどについて解説していきます。
また、公務員でも可能な副業についてもお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
※なお、この記事での「公務員」とは、地方公務員を指します。
なぜ公務員は副業したらダメなのか
まずは、公務員が副業してはいけないという根拠について確認してみましょう。
公務員の兼業については、公務の能率の確保、職務の公正の確保、職員の品位の保持等の理由から、許可制となっています。
なお、法律上は次のように規定されています。
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
地方公務員法|e-Gov 法令検索
つまり、任命権者(地方公共団体の長など)の許可が無ければ副業はできません、ということです。
では、許可を得れば副業できるのかというと、許可の基準を設けている自治体は少なく、前例もあまり無いことから、実際は難しいと考えられます。
わたしが働ていたところも、許可基準はありませんでした。
無許可で副業しているのがバレたらどうなる?
では、職場の許可を得ずに副業していることがバレたら、どうなるのでしょうか?
人事院の懲戒処分の指針についてによれば、次のように書かれています。
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
懲戒処分の指針について | 人事院
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
許可なく副業したら、減給または戒告の懲戒処分になるということです。
ちなみに、懲戒処分には以下の4つがあります。
- 免職・・・公務員としての身分を失わせる処分(=懲戒免職)
- 停職・・・一定期間職務に従事させない処分で、給与は支給されない
- 減給・・・一定期間給与が減額される処分
- 戒告・・・その責任を確認し、将来を戒める処分
副業がバレると、重い処分が下されるということですね…
なお、自治体によって若干異なるものの、さきほどの人事院の指針に倣って職員の懲戒処分に関する基準や規程を定めているところが多いようです。
では実際に、副業がバレて懲戒処分された実例をいくつか見てみましょう。
懲戒処分…消防署員ら12人、食品を配送していた 副業禁止のはずが 最大15万円の報酬、5人は減給処分に
朝霞地区4市を管轄する埼玉県南西部消防局は24日、地方公務員法で禁じられている副業を行ったとして、志木消防署と新座消防署に勤務する24~30歳の男性主事5人を減給10分の1、男性職員7人を訓告などの処分にしたと発表した。
埼玉新聞 2023年3年25日
市職員、スニーカー転売で1900万円 減給「副業にあたるとは…」
ネットオークションを繰り返し、9年で総額約1900万円の転売益を上げていたとして、三重県伊勢市は10日、会計課係長級の男性職員(45)を減給10分の1(6カ月)とする懲戒処分にし、発表した。副業を禁じた地方公務員法に違反したと判断した。
朝日新聞デジタル 2023年2月10日
消防士ユーチューバー、ゲーム実況で収入115万円…副業禁止で懲戒「認識甘かった」
ゲームのプレー状況を「実況中継」する自作動画をネット上に投稿して約115万円を稼いだとして、和歌山市は11日、市消防局の男性消防士長(33)を減給10分の1(1か月)の懲戒処分にした。市は動画投稿で金銭を得る行為が、地方公務員法で原則禁じている副業にあたると判断した。
読売新聞オンライン 2022年1月12日
このように、副業がバレて処分された例はいくつもあります。
みなさんもお気をつけください!
ただ、最近では徐々に公務員の副業を解禁する動きも出てきています。
次に、その最新の動向について確認してみましょう。
副業解禁の現状は?
近年、多様で柔軟な働き方へのニーズの高まりや人手不足などを受けて、公務員も副業を解禁してはどうかという議論が盛んになっています。
最近では、国から各地方公共団体に向けて副業の許可に関する通知が出されるなど、副業解禁の機運は高まっているようです。
こうした動きを受けてか、一部の自治体で実際に副業を解禁したことが話題になりました。
サクランボ農家が人手奪い合う山形県、公務員が「副業」で収穫…時給1200円
サクランボの生産量日本一を誇る山形県で、自治体職員が副業として収穫に従事するのを認める動きが広がっている。農業人口の減少や高齢化が進む中、労働力を確保するのが狙いだ。現在、県と6市が副業制度を定めており、職員が地域の基幹産業である農業への理解を深める効果も期待されている。
読売新聞オンライン 2023年7月13日
日高東部、公務員の副業次々 振興局や様似町に続き、えりも町も解禁 コンブ干しの貴重な戦力
町は本年度から条件付きで職員の副業を解禁した。人手不足が深刻なコンブ干し作業の支援を想定したもので、職員38人が許可を受け、出勤前に現場で汗を流している。昨年度から日高振興局や様似町が、地場産業の現場で職員の副業を認めたのに続く試みで、日高東部地域でも自治体職員が副業に従事する取り組みが広がっている。
北海道新聞 2023年7月24日
北栄町が副業を解禁 2人が公益性の高い活動にあたる
北栄町は、今年度から規則を改正し職員の副業を認めていて、現在2人の職員が副業として報酬を得ながら部活動の指導などの公益性の高い活動にあたっています。(中略)町によりますと、20代の職員2人から副業の申請があり、中学校の部活動の指導や、公民館の茶道教室の補助などにあたっているということです。
NHK 2023年6月29日
このように、全国で続々と副業が解禁されているので、この流れは今後多くの自治体に広がっていくのではないかと思われます。
しかし、公務員の副業が解禁されたとはいえ、その職種を見ると農業や漁業、あるいは部活の指導といった公益性の高いものに限られています。
今後も公務員の副業解禁は進んでいくものの、全面的な解禁はもう少し先になるのではないかなと思います。
公務員の副業禁止はおかしい?元公務員の見解は…
さて、ここまで公務員の副業に関するルールや最近の動きなどについて見てきました。
ざっくりまとめれば、公務員の副業は「徐々に解禁されつつあるけど原則禁止」というものでした。
これを見て、あなたは「公務員の副業禁止の規定はおかしい!」と感じますか?
個人的には、わたしが現役の公務員だった頃、公務員の副業が禁止されているのはおかしくないか?と何度も思いました。
そもそも公務員の副業を禁止している背景には、公務員が税金で給料を貰い、公共サービスを提供しているため、公務員には高い中立性が求められることが理由です。
公務員の副業を禁止することのメリットは、本業に集中する環境を作れることや、利害関係や不正行為を防げること、社会的な信用を損なわないことなどが挙げられます。
反対にデメリットとしては、公務員の自己研鑽やキャリアアップの機会を失うことや、柔軟で多様な働き方ができないこと、公務員を志望する人材の流出などが考えられます。
こういったことを踏まえると、公務員の副業禁止は仕方がない面もあることは理解できます。
しかし、公務員でももっと自由に働きたいと考えている人はたくさんいるはずです。
特に、最近では公務員業界でも人材不足が顕著になってきています。
その証拠に、こんなニュースが話題になりました。
このように、公務員のなり手不足が深刻化している中で、公務員の副業を解禁することはその解消の一手になるはず。
当然自治体も対策を打ってくるはずなので、今後公務員の副業はどんどん解禁される方向になっていくでしょうし、そうなることを願っています。
今後の動きに注目ですね。
公務員でもできる副業とは?
さて、冒頭でも少し触れましたが、実は公務員でもできる副業はいくつかあります。
たとえば、以下のようなものです。
- 執筆・講演活動
- 小規模な農業
- 家業の手伝い
これらは、公務員でも兼業可能です。
しかし、これらの副業は職場の許可を得る必要があります。
でも正直なことろ、職場の許可を得るのは結構面倒ですよね。
職場に申請するのも、説明するのも骨が折れます。
そこで、こちらの記事では公務員でも許可なしで可能な5つの副業についてピックアップしました。
ひとつずつ難易度別に詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、公務員の副業禁止の規定がおかしいことなのかどうかについてお伝えしました。
最後に要点をまとめます。
これからは、公務員でも多様な働き方ができる時代になることを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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